えらくなんかならなくてもいい、と私情では思う。しかし、やっぱりえらくなるといいと思う。えらくならしてやりたいとおもう。えらくなくてはおいしいものもたべられないし、つまらぬ奴にはいばられるしこんな世の中、えらくならなくてもいいような世の中だからどうせつまらない世の中だからえらくなってくらす方がいいと思う。
人物:岡本かの子(おかもとかのこ)
1889-1939年。東京府東京市赤坂区(現在の東京都港区)出身。旧姓は大貫、本名はカノ。跡見女学校在学中から新詩社に参加し、『明星』『スバル』に新体詩や和歌を発表。漫画家の岡本一平と結婚し、芸術家の岡本太郎を生んだ。仏教の研究家としても知られる。著書に『鶴は病みき』『母子叙情』『老妓抄』『河明り』『生々流転』などがある。