甘いコーヒー【脚本】
生徒「先生は、恋ってした事ありますか?」
先生「そりゃあまぁ、君よりは長く生きているからね。一度や二度くらい、あるよ」
生徒「どんな人でした?」
先生「んー…初めて好きになった人は、近所のお姉さんだったな。すごく優しくしてくれたんだ。でも、僕が小学校に上がった頃に、結婚してしまった」
生徒「次は?」
先生「中学二年の時。担任の若い先生だった。でも、告白する勇気もなかった。結局卒業するまで、先生と生徒のままだったな」
生徒「その次は?」
先生「大学に入ったばかりの時、サークルの先輩。その人とは、少しの間付き合ったよ。二年くらいだったけど」
生徒「…年上ばっかりですね」
先生「言われてみれば、確かに」
生徒「…ふぅん」
先生「何だか面白くなさそうな顔をしているな」
生徒「別に」
先生「次は聞いてくれないの?」
生徒「興味ありません。っていうか、なくなりました」
先生「そうか。それは残念。次が一番新しい情報なんだけど」
生徒「…けどまぁ、そこまで言うなら、聞いてあげてもいいですよ」
先生「私は別にどっちでもいいんだけど」
生徒「もったいぶらないで、早く言ってください!」
先生「はいはい。私が次に恋したのはねぇ…ちょっと我儘で、気が強いのに、泣き虫で、何かあるとすぐ研究室にきて私の世話を焼く教え子」
生徒「…それって、いつの話ですか?」
先生「んー…まぁ、結構最近、かなぁ」
生徒「…ふぅん」
先生「…興味、出た?」
生徒「…まぁ、ぼちぼち」
先生「で?君は?恋、したことあるの?」
生徒「…そういうこと、乙女に聞かないでください」
先生「うわ、ずるいなぁ。…コーヒー、飲む?」
生徒「いただきます。ミルクは―――」
先生「一杯。砂糖は三杯、ね。いつも通り」
生徒「…お願いします」