田舎の行政
私は市井の人間だが、最近どうも世の中の動きが酷く変わってきたように見えてならい。月光仮面を見て育ってきた人間にとって、一体正義とは何だろうと思っている。今時正義なんて言葉を吐こうものなら、若者にゲラゲラ笑われそうである。だから黙っている。同年代の仲間と黙々とゲートボールをして、下らない冗談を言って気をそらしている。
私は人口約十万の衛星都市から、人口六千を切る小さな街に移住した。取り敢えず無職で、気に入らない住民と住みにくい土地であれば次の街に移住して、気に入った街を終の土地とする事に決め、持ち家とほとんどの(少ない)財産を処分して、この街にきた。そこで取り敢えず福祉協議会に、請われるままボランティアをする事にした。
で、驚いた事があって、初めての理事会の時に「赤い羽根について、各町内会に一人当たり五百円の協力をお願いします。つきましては、昨年度は〇×町内会は何戸・・・・・」との話になった。私は挙手をして、「一寸待ってください、これは強制ですか?」と聞いたところ、他の理事はポカンとした。と、事務局長が突然立ち上がり、何やら説明を始めたのである。
私は、ただ強制ですかと聞いただけなのに。説明では、どうやら強制ではないようである。いずれにしろ、事務局長はしどろもどろの説明だった。私はこの質問自体すべきではなったと、その時思った。こと、さように次々と議題があって、最後は必ずサインとハンコを求められた。つまりは、理事とは名ばかりであり、何もして欲しくないのであった。
協議会は役所の下部機関であり、役所に言われた仕事だけをすればいい、という事らしい。現に新人が入ってくると、先ず第一に「役所に言われた事以外の仕事をしてはならない。余計な事はするな」と言われるそうである。私が民間会社で働いていた時に上司に言われた事は、「創造性の無い社員は会社を去ってくれ」だった。随分と違うものである。余計な仕事はするな、これが役人なのだ。
余計な(面倒で責任をとられそうな)事をするのは困る、のである。兎に角、上(国)に言われた事は絶対であり、一言一句間違いのない仕事をする下部が優秀な職員であるらしい。これだもの、何十年も小間使いのように上司に仕えた職員がしかるべき処に天下りするのを心待ちにする気持ちもわかる。人生の大半をこんな面白くもない人生を送るのだから。
さて、私がもう一つ驚いた事がある。地方の役所の担当者は、分厚い法令集を必死になって勉強していた。それは、多分担当者にとって金科玉条だからであろう。黄門様の印籠と同じなのた。こうして、必死に中央政府に忠誠を誓って批判精神を失ってしまうのだと思う。