女王様と魔法の鏡【脚本】
女王「鏡よ鏡。この世界で一番美しいのはだぁれ?」
鏡「それは、姫君です。姫君こそが世界で一番美しい」
女王「何て事…!ついに恐れていた事が起こってしまった…。こんな事、あってはならないわ…こうなったら…」
鏡「まずは美容の為にアロエでパックをすべきかと」
女王「そうね。肌荒れを防ぐ所から…って違う!」
鏡「アロエはお嫌いですか?では檸檬に致しましょう」
女王「アロエでも檸檬でも胡瓜でもない!誰が私の肌荒れ予防の話をしているのよ!」
鏡「失礼致しました。では腰をスイングさせて脂肪を燃焼させるエクササイズに致しましょう」
女王「これ結構いい運動に…ってだからそうじゃなくて!」
鏡「二の腕や太腿の方が気になられますか?」
女王「実は最近背中の贅肉が…。…いい加減にしなさい。叩き割るわよ」
鏡「そう目くじらをおたてにならず。わたくしはただ、付きつけられた無情な現実に殺気だった女王陛下の御心を癒すべく、ちょっとウィットにとんだジョークを飛ばしただけでございます」
女王「どこがじゃ。完全に馬鹿にしているじゃないの」
鏡「滅相もございません。わたくしは貴女様の忠実な魔道具。真実を映す魔法の鏡です。御主人様を馬鹿にする事など、あるはずがないではありませんか」
女王「ふん、どうだか。…まぁいいわ。確かに御かげでちょっと冷静になったし。…けど、やはり腹立たしいわ。あんな小娘が、私を差し置いて世界一美しいだなんて。一体どうしたものかしら」
鏡「女王陛下。わたくしに妙案がございます」
女王「なんですって?言ってごらんなさい」
鏡「まず、今年一番の林檎を用意します」
女王「林檎ね。…誰か!今年とれた中で一番の林檎を持ってきて!…それから?」
鏡「その林檎を摩り下ろします」
女王「そのまま食べさせるのでは芸がないと言う事?…よし、出来たわ。それで?」
鏡「蜂蜜を投入」
女王「毒を誤魔化し、尚且つ子供の好きな甘みをプラスする作戦ね」
鏡「それをヨーグルトにかけると」
女王「かけると?」
鏡「美容にも健康にも最適のデザートが」
女王「私の美容の話はもういいって言ってるでしょうが!」
鏡「カロリーも結構低いのでお勧めですよ」
女王「喧しい!…お前、まさか私に姫を殺させないようにしているんじゃ…」
鏡「何を仰います。先程も申し上げた通り、わたくしは貴女様の忠実な魔道具。誓って不純な感情などございません」
女王「…では、これが最後のチャンスよ。再び私が世界一美しくなる為には、姫に消えて貰わなければならないわ。その方法を教えなさい」
鏡「お教えするのは造作もない事でございます。が、それには少々手間と時間が」
女王「まぁ仕方がないわね。で?どれくらいかかるの?」
鏡「三十年程お待ちください。そうすれば、姫も立派なアラフォーに」
女王「誰か!今すぐ金槌とガムテープを持ってきてちょうだい!」